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第9回iPERCセミナーを開催しました

2020/01/06

 12月16日、Beckman Laser InstituteのProject ScientistのRobert Virgil Warren先生をお迎えして、光創起イノベーション研究拠点のJournal Clubを行いました。これは、浜松医科大学と静岡大学の学生が1つの英語論文を役割分担して発表するJournal Clubです。今回は、静岡大学や浜松医科大学、浜松ホトニクス(株)の学生、教員、研究者37名が参加し、論文「Quantitative Skin Assessment Using Spatial Frequency Domain Imaging (SFDI) in Patients With or at High Risk for Pressure Ulcers」を素材にして、空間周波数領域イメージング:Spatial Frequency Domain Imaging (SFDI)を用いた褥瘡(じょくそう、Pressure Ulcer)リスクの高い患者への定量的皮膚診断について議論しました。

 褥瘡とは外力がかかることで圧迫された組織が障害された状態で、アメリカでは650万人が罹患しており、医療費は年間250億ドル以上になるそうです。疾患者が多く、医療費が高額な原因は、罹患率が高く、入院が長期に亘るためのようです。コスト削減と、罹患率の低下、後遺症への発達を減らすためには、褥瘡を早期に発見する必要があるのに対して、従来は視診で診断されており、精度が不確かなため、研究チームはSFDIを用いた定量的な診断手法を研究されています。

 褥瘡診断には、いくつかの新しい診断技術がある中で、SFDIは、組織の光学的特徴と構成成分を分析可能である非接触で広い範囲を撮像可能なイメージング技術です。他の新しい診断技術に対して、さまざまな皮膚の形状や散乱線がある中で、組織の酸素飽和度マップを広範囲で取得可能という利点があります。

 SFDIは、構造化光(structured light)という干渉縞のような光を皮膚に照射し、カメラで撮像します。いくつかの空間周波数と、位相、波長の光で撮像し、それぞれの位相を用いて各周波数と波長の直流成分と交流成分を計算します。シミュレーション値とそれらのデータを比較することで、酸素飽和度分布の取得が可能となります。

 発表後、Warren先生と聴講者から、発表した学生に対して質疑応答が行われました。

 Warren先生からは「どのような人が褥瘡になるリスクが高いか」という質問があり、発表者は「寝たきりになるような高齢者が高いだろう」と回答しました。また、「なぜ今回の研究で近赤外光を使用したのか」という質問に対しては、「可視光は散乱が多く内部情報を得るのには近赤外光が適している」と回答していました。また、「検査にあたって患者の負担になる場合があるのに対して、測定装置は大きいのか、動かしやすいのか」という質問があり、「今回の研究で用いたものはそうではないが、ポータブルでベッドサイドに持ち込むのが可能なものもある」との回答がありました。

 更に、今回のシミュレーションにモンテカルロシミュレーション*が用いられていた点について、「モンテカルロシミュレーション以外の計算方法もあるのか」という問いに対して、「モンテカルロシミュレーションは完璧な理解がなくても計算するのに適しているが、数学的に計算することも可能」と回答がありました。

 被写体と装置間の距離についても質問があり、「場合によっては変えられるが10-50 cm程度」とのことでした。また、画像サイズについても質問があり、これについても撮像環境によって変えることが可能だがmm程度とのことでした。

 今回の実験で5種類の空間周波数の光でそれぞれが撮像されていた点について、「1度に複数の周波数の撮像が可能か」という質問があり、「1度に撮像することは困難」との回答がありました。

* モンテカルロシミュレーション:乱数を利用する確率的シミュレーション

(出典:中川健治、「モンテカルロ・シミュレーション基礎」、『通信ソサエティマガジン』No.6 秋号、2008、pp.11-20)

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