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第9回特別講演会を開催しました

2019/12/06

 11月13日、光創起イノベーション研究拠点では、Max Planck 研究所の安田涼平博士を講師にお迎えして特別講演会を開催しました。  

 安田先生は、Max Planck Florida Institute for NeuroscienceのScientific Directorで、神経科学分野(短期記憶の分子メカニズム解明)の研究で数々の成果をあげてこられた方で、今回は「光学的手法による神経細胞内シグナリング動態の解明」と題してご講演いただきました。

 ご講演では、はじめに細胞シグナリングに重要な役割を果たしている樹状突起スパインについて説明いただきました。スパインの形態異常は、多くの精神疾患と関与していると考えられており、その構造がどのように制御されているかを調べることは非常に重要です。また、スパインの構造変化は記憶学習の基礎であることがわかっています。2光子グルタミン酸アンケージング法では、単一のスパインを刺激することにより、どのようにスパインの構造が変化しているかの観察をしています。例えば、0.5μm程度のスパインにグルタミン酸をかけると、そのスパインだけ強い刺激が起きて数倍位大きくなって、数分たつと2倍位になって維持される。細胞電位の測定により、グルタミン酸の感受性もそれに比例して大きくなり、シナプスの強度が増大していることがわかります。

 また、哺乳類の神経細胞には1万位の遺伝子が発現しており、発現したタンパク質が細胞内シグナリングネットワークを作っています。これを定量するために、安田先生は、2光子蛍光寿命顕微鏡(ハードウェア)とシグナリングセンサのバイオセンサー(ソフトウェア)を使った方法で取り組んでいます。バイオセンサーはここ10年程で安田先生が作ってきたもので、これによって細胞内シグナリングがどう制御されているのかを測定することができます。スパインの構造変更はスパイン内部のカルシウム情報で引き起こされ、カルシウムが下流のカルシウム感受性の酵素を活性化していると考えられます。

 さらに、単一スパインのシグナリング情報は核にまで届き、細胞全体の情報もスパインが制御しているのではないかと考えています。カルシウム上昇は数十ミリ秒しか続かないが、カルシウム感受性酵素のCaMKⅡの活性の測定を行うと、今回の測定により6秒程度で減衰し、カルシウム上昇を引き継いでいることがわかります。また、安田先生が作成したTrkBという酵素の活性センサーにより、スパインからはBDNFというペプチドが放出され、同じスパイン上のTrkBリセプターに結合して活性を引き起こし、これにより活性化されたTrkBは数十分維持され、他のタンパク質を活性化していました。

 最後に、恐怖記憶の時間依存的阻害や運動学習の細胞種・脳領域依存的阻害についても行動実験を行った結果をご説明いただきました。安田先生は、こういった様々な方法により行動と細胞内シグナリングを結びつけられたらと考えているとのことで、記憶が10分程度は保持するということは分かっているが、何日も維持されるのが何故かはわかっておらず、また、どんな核やタンパク質が必要かもわかっていないため、イメージングで解明したいとお話されていました。

 会場では静岡大学、光産業創成大学院大学、浜松ホトニクスの研究者、教員、学生など22名が参加し、ご講演後は、短期記憶と長期記憶の区別はどのように行っているか。グルタミン酸を入力とする例を説明いただいたが、その他に入力となる物質があるのか。スパインが数倍になった後2倍になって維持されるということだが、元の大きさに戻らないのはなぜか。等、多数の質問にも丁寧に応えていただき、終わりまでとても興味深く聴講しました。

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