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第10回特別講演会を開催しました

2019/12/24

 12月9日、光創起イノベーション研究拠点では、McGill大学のBenjaminC.M.Fung教授を講師にお迎えして特別講演会を開催しました。

 Fung教授はデータマイニングや機械学習について研究されており、これまでに研究された電子文書の著者特定手法とマルウェア分析手法に加え、最近のテーマであるニューロサイエンスについてのご講演を聴講しました。

 電子文書の著者特定手法は、データマイニングによって著者の文章の特徴を数値化することで筆者を特定する手法。Fung教授のご家族は、なりすましメールの詐欺にあったことがあり、5,000ドル未満の事件では捜査されないこと、メールアドレスやIPアドレスからは犯人の特定に至らないことから、そういった被害を減らすために研究されたそうです。

 これは、自然言語処理によって計量文体学的(Stylometric)な特徴分析を行い、話題的な特徴や語彙的な特徴等を抽出して著者を特定する手法です。 

 Twitterからアカウントの持ち主の特徴を分析する自然言語処理の応用として、個人のTwitterを読み込み、性別や年代、支持政党などの特徴の分析をFung教授が開発したプログラムで実演されました。

 マルウェア分析手法では、既存のマルウェアと同一機能を含むマルウェアの検出手法を紹介されました。バイナリコードからマルウェアを分析する一般的な手法は、PC上で挙動を監視する方法と、エンジニアによってバイナリコードからアセンブリコードに変換しリバースエンジニアリングする方法があり、前者は監視されている環境下で有害な動作をしない場合があり、後者は時間がかかる作業であることから、効率的かつ効果的な分析をするため教授は研究されました。提案手法は、グラフマイニング*によって既存のマルウェアの部分的なクローンであるコードを検出することが可能とのことです。

 最近のテーマであるニューロサイエンスの研究では、ラットの脳を顕微鏡で直接観察してニューロンの発火を分析する研究や、敵対するラットがケージ内にいる場合といない場合のラットの行動分析について紹介されました。

 静岡大学で情報セキュリティを研究されている西垣教授の質問の1つ目「電子文書の著者特定手法について、word2vec**を用いた手法であるか、提案手法のどの部分に用いられているのか」についてBenjamin教授は概念図を示して、詳細を説明されました。

 2つ目の「マルウェア分析について、一つの目的に対してさまざまな記述方法がある中で、提案手法のみではマルウェアの検出が不十分ではないのか」についてBenjamin教授は西垣教授の意見を肯定し、今回はマルウェアの部分的なクローン検索をテーマにして研究を行ったが、今後の課題であると回答されました。

 本講演会に参加して、データマイニングや機械学習について、AIの音声認識や工場のオートメーションなどの、サービスや生産に役立つ印象が強かったのですが、想像より広い範囲で日常と密接に関係がある技術であることがわかりました。

 特に、Twitterから特徴を分析する技術については、このような技術を用いることで、市場調査や政党の支持率調査等の、現在アンケートで行われている情報収集が効率的に行えると考えられ、関心を持ちました。人が回答し集計するようなアンケート調査は、規模に応じてかかる時間と費用が大きくなります。データマイニングや機械学習によって安価かつ短時間で詳細まで分析できるようになれば、大規模な調査が困難であったBtoCの中小企業であっても、より消費者ニーズに合った製品開発が可能になり、ニッチな市場をターゲットにしたスタートアップの活性化などが考えられると思いました。

*  グラフマイニング:データマイニングの一種でありグラフ構造データを対象として有用な知識を効率的に発掘する手法(出典:鷲尾 隆ら、「グラフマイニングとその統計的モデリングへの応用」、『統計数理』第54巻第2号、2006, pp.315-331)

** word2vec:大規模なデータセットから単語の連続ベクトル表現を計算する手法(出典: Tomas Mikolov et. al, “Efficient Estimation of Word Representations in Vector Space”, ICLR 2013)

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